世界史は激動の連続です。それを動かしてきたのは、戦争や外交上の駆け引き、産業の盛衰、あるいは才能や強運を備えたヒーローたちの活躍と思われがちですが、じつは病気もまた、文明の興亡を大きく左右してきました。
多数の病死者を出したパンデミックだけが、歴史に爪痕を刻んだわけではありません。大病を患ったのが仮にたった一人だったとしても、それが当時のキーマンであれば、その打撃には計り知れないものがあります。もし今、ウクライナのゼレンスキー大統領が急病で突然人事不省に陥ったら……。そう考えると、影響の大きさが容易に想像できるでしょう。
これまであまり知られてこなかった病気や医学にまつわるエピソードを、医学史研究の第一人者が掘り起こし、世界史を理系目線で読み解きます。
そこから浮かび上がってくるのは、一人ひとりでは極めて脆弱なヒトという生物が、みんなで知恵を寄せ合い、たくましく命をつないできた奇跡の物語です。